JCGReport_No.001
須崎保弘(中小企業診断士)
-トライアル信託を活用した事業承継事例-
現代表取締役Aは3代目(74歳)、Aの妻B(取締役)(72歳)子供なし、今期はコロナ・日中経済摩擦で売上平均2割減少しているが直近5期においては売上6億円 営業利益8千万円近く稼ぎ出している好業績高株価企業であるが、際立った特徴があるわけではなく 納期・品質・価格面でも大きな差別化要因とはなっていない。あえていうなら、特定加工分野において数少ない加工ができるといったニッチな存在であるとともに、経営者の天性的な商売感覚・値段交渉等の営業取引における粘り強さによって支えられた会社だといえる。
子供がいないので、後継者を誰にするかということ、及び 自社株の移動方法に関して相談があった。AとBの自社株持ち分割合は、2/3を若干上回りM&A、廃業など組織変更のための割合を維持しており問題はない。
- 解決すべき課題
さしたる特徴(強み)もなく、現社長の強烈な個性で維持発展してきた会社を今後維持することのできる後継者候補を探し当てることは困難な状況。
M&Aの検討をおこなうが、採用は難しいようにおもわれた。
理由
・短期間で後継者を決定し売買を決断しなければならないといったこと。まして、当社のようなトップマネジメント強烈な個性で会社を引っ張ってきた企業においては、経営引き継ぎはハードルが高い。
M&Aは当社のような後継者不在の会社の事業承継問題を解決する有効な手段として最近小規模な会社のおいても用いられてきていますが、売り手側と買い手の信頼関係の構築する機関がほとんどなく、成功する確率が小さいのが実態である。
そこで、トライアル信託という新しいM&Aスタイルを活用することとした。
- 民事信託の仕組み
民事信託とは、資産を持っている経営者(委託者)が後継者候補(受託者)に対し、自社株を移転し、その受託者が受益者(この場合経営者)のために、その資産や会社(信託財産)を管理運営・処分することいいます。
トライアル信託は、民事信託の猶予期間(トライアル期間)を組み込んだもので、一定の期間受託者である後継者候補は経営者(委託者&受益者)のために、会社経営を実際にやってみるということになる。そして、双方が事業承継をおこなわせてもいいと判断すれば後継者を帰属権利者とし、望ましくないと判断すれば経営者を帰属権利者に戻すといったことをおこなう。
当社のような、M&Aでデユーデリジェンスをおこなっても特徴が出てこない会社においては相互信頼をベースにした仕組みが適切。これは、後継者候補にとっては、当社のような判断がつきかねる会社を引き継ぐにあたっては慎重にならざるを得ず、実際に経営にあたってみることが最も妥当とおもわれる。
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